順天堂医学
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特集 再興感染症 ―結核をめぐって―
腸結核
荻原 達雄小林 修大野 康彦寺井 毅佐藤 信紘
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1999 年 44 巻 4 号 p. 383-387

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抄録

消化管に生じる結核感染症のうち, 最も頻度が高いのが腸結核 (小腸および大腸結核) である. 肺結核の合併症として発症する続発性腸結核は, 近年肺結核とともに減少してきたが, 腸管が初感染巣と考えられる原発性腸結核の割合は増加しており, 最近では, 腎移植・透析・AIDSなどの免疫不全状態に伴う腸結核の増加もみられる. 腸結核はリンパろ胞が発達している回盲部が好発部位である. 症状として下痢を訴える例はむしろ少なく, 下腹部不快・腹部鈍痛・衰弱感などの多様な愁訴を初発症状とすることが多い. 活動期の肉眼形態として, 不整な小潰瘍の輪状配列や輪状・帯状・地図状潰瘍がみられる. 治癒期には, 線状瘢痕の多発, 瘢痕萎縮帯などの特徴的所見が長期間持続する. 腸結核の診断は, 生検組織で結核結節 (乾酪性肉芽腫) の証明および, 便および生検組織の結核菌培養によってなされる. 便の結核菌培養陽性率は低いのに対し, 病変部組織培養の陽性率は高く診断上有用である. 近年は結核菌のDNA増幅法 (PCR) による分子生物学的診断が腸結核に対しても実用化されており, 結核菌表層糖脂質成分のひとつであるcord factorを抗原として用いる血清学的診断も研究されている.

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© 1999 順天堂医学会
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