順天堂医学
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原著
S状結腸利用膀胱拡大術後に於ける膀胱粘膜の組織学的検討
岩下 公江山高 篤行森岡 新小林 弘幸岡崎 任晴宮野 武
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1999 年 44 巻 4 号 p. 415-422

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抄録

緒言: 近年, 膀胱拡大術後の中期・長期経過観察例に於いて, 形成膀胱からの悪性腫瘍発生の報告が増加してきている. 対象・方法: 今回著者らは自験膀胱拡大術後症例 (n=100: 手術時年齢平均10.6歳) に対し, 術後定期的に施行した膀胱粘膜生検検体をもとに, 異形成や悪性化の有無に注目し, 形成膀胱粘膜の組織学的検討を行ったので報告する. 結果: 膀胱粘膜の扁平上皮化生を5例に, 過形成を2例に認めた. しかしながら, 全例に異形成および悪性化の所見を認めなかった. 術後短期 (術後5年未満) 経過44例, 中期 (5-10年) 経過48例, 長期 (10年以上) 経過8例の3群間のH-E染色, PCNA染色には, 有意な差異を認めなかった. 術後膀胱洗浄非施行例, 膀胱結石を有する症例におけるPCNAの発現は, 膀胱洗浄施行例, 膀胱結石を有しない症例に比し有意に強かった. 結論: 自験例に於いて膀胱洗浄の継続を指導し, 特に膀胱結石発生症例では, 少なくとも1年に1回の膀胱鏡検査 (生検による組織学的検査を含む) が必要であると考える.

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© 1999 順天堂医学会
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