抄録
20世紀末から高まった低侵襲外科治療の潮流は心臓血管外科領域にも入り込み, 現在成人心臓血管外科手術で最も数多い冠状動脈バイパス術では, 小切開や心拍動下という形で経験を積むことからはじまった. 当科では2002年7月から手術の質を低下させないように動脈グラフト中心の心拍動下CABGを第一選択とし, 8ヵ月で133例のCABGを経験した. その内109例について胸骨正中切開の心拍動下で施行し, 平均年齢65.6±8.7歳, バイパス本数は3.8±1.2本, 手術死亡1例0.9%であった. 術後合併症についても周術期心筋梗塞, 術後出血再開胸はそれぞれ1例0.9%ずつで, 術後腎不全2例 (1.8%), 電気的除細動を要した心房細動5例 (4.6%) と比較的良好なものであった. 早期回復への一助として, 手術室で麻酔覚醒を得て人工呼吸器を離脱すると術後ICU滞在日数, 在院日数とも短縮される傾向にあった. 心拍動下CABGは早期回復が得やすいが, 後進の教育や病院収入, 適応拡大と術後症例の受け入れなどの点で解決しなければならない問題点も生じてきている.