抄録
目的: 心電図同期再構成法を用いたマルチスライスCTでは心拍動による画質劣化を来すことなく心臓を描出可能である. 今回われわれはマルチスライスCTを用いた冠動脈病変の診断能を検討した.
対象・方法: 対象は冠動脈疾患が疑われ, 経動脈的冠動脈造影とマルチスライスCTの両方が施行された10症例である. マルチスライスCTは4列×2mm, 0.5秒/回転で撮影し, 心電図同期再構成法を用いて画像再構成を行い, ボリュームレンダリング法で三次元画像 (3D) を作成した. 冠動脈を7つの区域に分け, 2人の放射線科医が冠動脈の有意狭窄病変や閉塞病変の有無についてそれぞれ評価し, その結果を経動脈的冠動脈造影所見と比較した.
結果: 10症例の冠動脈近位部の全70区域のうち55区域がマルチスライスCTで描出された. 24カ所の冠動脈病変のうち16カ所 (67%) がマルチスライスCTでも正確に診断された. 内訳は右冠動脈 (RCA) 8カ所のうち6カ所, 左前下行枝 (LAD) 10カ所のうち8カ所, 左回旋枝 (LCX) 3カ所のうち2カ所出会った. マルチスライスCTの感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率はそれぞれ67%, 37%, 57%, 78%であった.
結論: マルチスライスCTは左前下行枝の有意狭窄については高い診断能を持ち, 臨床上有用な情報が得られる可能性があると思われた. マルチスライスCTの高速化などによる正診率向上, 適応拡大, さらなる低侵襲化が今後の課題と思われた.