順天堂医学
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50 巻, 3 号
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Contents
目次
総説
  • 堀越 哲, 富野 康日己
    2004 年50 巻3 号 p. 204-213
    発行日: 2004/09/29
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    高血圧症による腎障害の予後は悪くないとされてきた. しかしながら, 透析療法に至る末期腎不全の原因疾患として腎硬化症の頻度はわが国でも確実に増加している. その理由として高齢化社会や動脈硬化症の増加などが挙げられており, したがって, その治療にはまず他の生活習慣病と同様に, ライフスタイルの改善が必要となる. 薬物療法としては, 腎保護作用・蛋白尿減少効果のあるレニン・アンジオテンシン系抑制薬であるアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬 (ARB) がエビデンスに基づく治療薬として第一選択薬とされている. また最近, 利尿薬の効果が再認識され, この2剤 (あるいは3剤) を併用し血圧をコントロールしていくことが腎機能の予後を改善するためにも重要である. 一方, 高血圧症の経過中に腎動脈硬化による腎血管性高血圧を発症し, 急速に腎機能の悪化をもたらすことがある. この際には画像検査や血管形成術などによる診断・治療が必要になる. したがって, 高血圧症の治療には尿検査や血清クレアチニン値などの経過観察による腎障害の早期発見が重要である.
  • -心臓疾患の立場から-
    渡辺 嘉郎, 代田 浩之
    2004 年50 巻3 号 p. 214-222
    発行日: 2004/09/29
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    高血圧症は動脈硬化症の危険因子の一つとして虚血性心疾患の発症に関与するとともに, 心臓圧負荷を増大させ心肥大 (左室リモデリング) を引き起こす. また, 後負荷の増大は心不全の増悪を進展させる. 従って, 心臓疾患の1次および2次予防において高血圧症の治療は大変重要であり, 積極的な治療が必要である. 一方, 狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患の降圧療法においては冠循環の特殊性によりJカーブ現象という問題があり拡張期血圧の低下がむしろ虚血性心疾患の予後を悪化させる可能性が指摘され注意が必要である. 本稿では, 高血圧症の治療について心臓疾患の立場から概説する.
  • 中里 祐二
    2004 年50 巻3 号 p. 223-235
    発行日: 2004/09/29
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    最近の不整脈治療におけるトピックスは心房細動と致死的心室不整脈であり, それらについて概説した. 心房細動の慢性化の機序として心房のリモデリングが大きく関与していることが明らかとなり, 洞調律維持のためにはリモデリングの抑制を考慮した薬物治療が必要である. また心房細動の誘引となる心房性期外収縮のほとんどは肺静脈起源であることが報告され, 自覚症状が強く薬剤抵抗性のものに対しては, 肺静脈カテーテルアブレーションが行われている. 一方, 欧米の大規模臨床試験によりレートコントロール治療は抗不整脈薬によるリズムコントロール治療と比較しても予後に差がないと報告されたが, 方法論・QOLの評価等に問題があり, 本邦独自のエビデンスの集積が望まれる. 心室頻拍・心室細動に対する治療は突然死対策として重要である. これまで多くの一次予防・二次予防に関する臨床試験の結果, 低左心機能例における植え込み型除細動器 (ICD) 治療は薬物療法に比し, 生命予後を有意に改善することが明らかになった. また, もう一つの治療法として, 自動体外式除細動装置 (AED) の導入が進められており, 今後一般市民による除細動が可能となれば, 救命率の向上が期待される.
原著
  • 下地 啓五, 白石 昭彦, 飯塚 有応, 黒崎 喜久, 前原 忠行, 秋元 芳典, 代田 浩之
    2004 年50 巻3 号 p. 236-242
    発行日: 2004/09/29
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 心電図同期再構成法を用いたマルチスライスCTでは心拍動による画質劣化を来すことなく心臓を描出可能である. 今回われわれはマルチスライスCTを用いた冠動脈病変の診断能を検討した. 対象・方法: 対象は冠動脈疾患が疑われ, 経動脈的冠動脈造影とマルチスライスCTの両方が施行された10症例である. マルチスライスCTは4列×2mm, 0.5秒/回転で撮影し, 心電図同期再構成法を用いて画像再構成を行い, ボリュームレンダリング法で三次元画像 (3D) を作成した. 冠動脈を7つの区域に分け, 2人の放射線科医が冠動脈の有意狭窄病変や閉塞病変の有無についてそれぞれ評価し, その結果を経動脈的冠動脈造影所見と比較した. 結果: 10症例の冠動脈近位部の全70区域のうち55区域がマルチスライスCTで描出された. 24カ所の冠動脈病変のうち16カ所 (67%) がマルチスライスCTでも正確に診断された. 内訳は右冠動脈 (RCA) 8カ所のうち6カ所, 左前下行枝 (LAD) 10カ所のうち8カ所, 左回旋枝 (LCX) 3カ所のうち2カ所出会った. マルチスライスCTの感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率はそれぞれ67%, 37%, 57%, 78%であった. 結論: マルチスライスCTは左前下行枝の有意狭窄については高い診断能を持ち, 臨床上有用な情報が得られる可能性があると思われた. マルチスライスCTの高速化などによる正診率向上, 適応拡大, さらなる低侵襲化が今後の課題と思われた.
第14回都民公開講座《前立腺癌:どうしたらよいか?》
  • 川地 義雄
    2004 年50 巻3 号 p. 245-248
    発行日: 2004/09/29
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    前立腺癌は米国の黒人に多く, 次いで米国の白人・北欧諸国に多い. 日本を含むアジア諸国には少ないが, 最近の増加率では, 第1位がメキシコで, 次いで日本・シンガポールの順になっている. ハワイに移民した日本人の前立腺癌罹患率が丁度米国人と日本人との中間に位置することから, 生活習慣によって罹患率が変化するものと考えられている. 前立腺癌の特に初期症状としては, 少量の尿道からの出血が重要と考えるが, 種々の排尿障害症状は合併症によるものも多く, 癌は無症状であることが多い. それゆえに検診が重要である. 前立腺特異抗原 (prostate specific antigen; PSA) は前立腺癌のスクリーニングにおいて, 優れた感度と特異性を示すので, これを用いた前立腺癌検診の有用性は高い. 前立腺癌の診断には針生検を行い, 癌が検出されれば, 病理組織学的gradingと, さらにそれぞれ, 触診・超音波・MRI・CT, 全身骨scintigraphyによるT, N, Mのstagingを行う.
  • -内分泌療法-
    藤田 和彦
    2004 年50 巻3 号 p. 249-253
    発行日: 2004/09/29
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    前立腺癌は, 男性ホルモンの刺激によって増殖する. 男性ホルモンを低下させるなど, ホルモンの状態を変えることによる治療を内分泌療法という. 内分泌療法は転移のある進行した前立腺癌に対しての標準的治療法である. 去勢術は男性ホルモンを低下させることにより転移のある前立腺癌に対して, 約80%の有効率を示す. 1990年頃よりLH-RHアゴニスト (luteinizing hormone-releasing hormone) が使用可能となり, 定期的な皮下注射で去勢術と同等の治療効果を示した. さらに治療効果を改善するため, 副腎からの男性ホルモンの影響も少なくする目的で抗男性ホルモン薬を併用する最大男性ホルモン遮断療法 (MAB療法) が行われ, 同等以上の成績が得られた. これらは, 最初は高い有効率を示すものの1-2年後には効果が落ちることが多い. これは, 男性ホルモンが低いにもかかわらず, 増殖するような癌が増えてくるためである. これを再燃癌という. 再燃癌に対しては, 女性ホルモン薬が有効であることがある. また, 女性ホルモンに細胞分裂を阻止するような抗癌剤を併用することや副腎皮質ステロイドの投与も有効である. しかし, これらも効果の持続期間が限られている. 前立腺癌の中には, 種々の悪性度のものがあり分裂速度が遅いもの (高分化型) では, 5-10年間再燃してこないものも存在する. 高齢者 (75歳以上) において, 転移のない早期癌では, 手術を行わず, 内分泌療法のみで治療することが多い. また, 高分化型で癌の容積が少ない場合は, 内分泌療法もせず経過観察し, 悪化したら治療を始める選択肢も存在する.
  • -手術療法-
    坂本 善郎
    2004 年50 巻3 号 p. 254-258
    発行日: 2004/09/29
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    前立腺癌の根治的治療法の中で, その中心に位置するのは根治的前立腺摘除術である. この手術適応は, 根治しうる比較的早期の前立腺癌で, 日本では75歳ぐらいまでに施行している. 具体的に根治しうる前立腺癌とは, PSAがGray zoneである10以下で, 高分化型か中分化型またはGleason scoreが3+3=6以下, T1cまたはT2b以下, などである. 一方, 前立腺癌で致命的になる場合はホルモン不応性前立腺癌で, 低分化型の前立腺癌に多いといわれている. このため, 低分化型またはGleason score7以上の前立腺癌を早期に発見し, 手術療法または放射線療法により根治的治療を目指すことが前立腺癌による癌死を低下させる上で極めて重要である. 前立腺癌の治療選択は根治的治療法の中では小線源療法が最も早期の前立腺癌に適応され, 次いで根治的前立腺摘除術, さらに放射線外照射療法になる. 根治的前立腺摘除術と放射線外照射療法は, ホルモン療法を3ヵ月から6ヵ月ほど先行させ, Down stagingさせてから手術または放射線療法を行うネオアジュバント療法も行われている. 根治的前立腺摘除術には恥骨後式 (逆行性・順行性), 経会陰式・鏡視下がある. 一般的には恥骨後式が行われ, 前立腺を摘除する前に閉鎖リンパ節郭清術を行う. 根治的前立腺摘除術の合併症・後遺症には, 出血・直腸損傷・尿失禁・尿道狭窄がある. 性機能障害 (勃起不全) に対しては, 神経温存前立腺摘除術も行われているが, 癌の根治性が問題になる. 腹腔鏡手術の場合には, この他にガス塞栓の合併症がある. 前立腺癌に対する根治的前立腺摘除術は, 現在では比較的安全に施行できる確立された手術法になった. 鏡視下手術もされてきているが, より安全な手術法になるようにさらなる改良に取り組んでいるところである.
  • 唐澤 久美子
    2004 年50 巻3 号 p. 259-265
    発行日: 2004/09/29
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    放射線療法は切らずに癌を治す治療法として, 世界的に広く行われている. 前立腺癌においても有用性が高く, 米国では手術を抜き, 最も行われている治療法となっている. 前立腺の局所に対する治療としては, 体の外から放射線をかける外部照射と前立腺に放射線を出す小さな線源を挿入して治療する小線源治療がある. 外部照射は, リニアックからの高エネルギーX線を病巣に集中して照射する方法で, 治療期間が8週間かかる難点はあるが, 通院で治療でき, 最も体への負担が少ない治療法である. 適応範囲が広く, 様々な病状に適応可能である. 治療後に下血を生じるなどの有害反応が5%程度に生じる. 小線源治療は, ヨード125シード線源を約80個前立腺に刺入する方法と, 装置に装着されたイリジウム192線源を一時的に挿入する方法に大別される. いずれも麻酔をかけての手術操作が必要で入院を要するが, 治療期間は数日である. 小線源治療は癌が限局している症例にのみ有用である. 治療後に約半数例に, 排尿障害などの有害反応が生じる. いずれの治療法も治療効果は手術と同等であるが, 各々に長所, 短所があり内容を良く理解した上で, 選択するのが良いと思われる.
抄録
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