前立腺癌の根治的治療法の中で, その中心に位置するのは根治的前立腺摘除術である. この手術適応は, 根治しうる比較的早期の前立腺癌で, 日本では75歳ぐらいまでに施行している. 具体的に根治しうる前立腺癌とは, PSAがGray zoneである10以下で, 高分化型か中分化型またはGleason scoreが3+3=6以下, T1cまたはT2b以下, などである. 一方, 前立腺癌で致命的になる場合はホルモン不応性前立腺癌で, 低分化型の前立腺癌に多いといわれている. このため, 低分化型またはGleason score7以上の前立腺癌を早期に発見し, 手術療法または放射線療法により根治的治療を目指すことが前立腺癌による癌死を低下させる上で極めて重要である. 前立腺癌の治療選択は根治的治療法の中では小線源療法が最も早期の前立腺癌に適応され, 次いで根治的前立腺摘除術, さらに放射線外照射療法になる. 根治的前立腺摘除術と放射線外照射療法は, ホルモン療法を3ヵ月から6ヵ月ほど先行させ, Down stagingさせてから手術または放射線療法を行うネオアジュバント療法も行われている. 根治的前立腺摘除術には恥骨後式 (逆行性・順行性), 経会陰式・鏡視下がある. 一般的には恥骨後式が行われ, 前立腺を摘除する前に閉鎖リンパ節郭清術を行う. 根治的前立腺摘除術の合併症・後遺症には, 出血・直腸損傷・尿失禁・尿道狭窄がある. 性機能障害 (勃起不全) に対しては, 神経温存前立腺摘除術も行われているが, 癌の根治性が問題になる. 腹腔鏡手術の場合には, この他にガス塞栓の合併症がある. 前立腺癌に対する根治的前立腺摘除術は, 現在では比較的安全に施行できる確立された手術法になった. 鏡視下手術もされてきているが, より安全な手術法になるようにさらなる改良に取り組んでいるところである.
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