順天堂医学
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特集 医学研究のUP-TO-DATE
血液疾患における免疫異常
小池 道明
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2005 年 51 巻 1 号 p. 11-17

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抄録
骨髄異形成症候群 (MDS) では, なんらかの免疫的異常があると考えられていたが, 明確な証拠は認められなかった. 炎症性サイトカインである, TNF-α・IL-6・IL-1βについて末梢血の単核球を分離して3日間培養後サイトカインを測定したところ, 再生不良性貧血 (AA) とMDSの芽球の少ないタイプでは, 炎症性サイトカインが多く産生されることが判明した. 近年, MDSにおける血球の無効造血が, TNF-αがアポトーシスをおこすためにおこることがわかり, 抗TNF-α剤であるレミビッドという薬剤がMDSに有効であることが分かり, 臨床的にも効果があることが証明されはじめている. MDSや急性骨髄性白血病の予後の悪い症例では, 主に染色体の7番に異常があることが多いが, 7番染色体に癌抑制遺伝子が存在している可能性がある. しかし, まだ同定されていない. また, ビタミンD3は以前より分化誘導物質として考えられており, 各種悪性腫瘍に効果のあるアナログの検討がなされている. 多発性骨髄腫の末梢血のCD4/CD8比が低下していることと, CD8+T cellより産生され, CD4+T cellを制御するIL-16を測定すると, 病状が進行している症例で, 高くなることが分かった. 骨髄移植や分子標的療法の進歩が見られる中で, 抗サイトカイン療法や, 分化誘導療法も益々重要性が増してきていると考えられる.
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© 2005 順天堂医学会
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