抄録
パーキンソン病は高齢発症の疾患であるため, 有病率の変化はないが高齢化社会に伴いその患者数は増加しており大きな社会問題になっている. しかしパーキンソン病の神経細胞死のメカニズムは家族性パーキンソン病の研究成果などからαシヌクレイン異常蛋白の凝集やパーキン蛋白の欠損などが関与していることが判明した. また一方孤発性のパーキンソン病の神経細胞死は, パーキンソン病の剖検脳やN-methyl-4-phenyl-1, 2, 3, 6-tetrahydropyridine (MPTP) などを用いたパーキンソン病モデルの検討からミトコンドリア異常・活性酸素・炎症などがカスパーゼなどを介し神経細胞死にいたる経路も解明されてきた. 現在では, それらを制御する遺伝子治療や再生医療などの可能性について基礎研究から臨床へと移りつつあるターニングポイントである. 常染色体劣性遺伝性パーキンソン病はloss of functionであり, パーキン遺伝子を用いた遺伝子治療の良い適応である. 日本において, 世界に先駆けた治療が期待される.