順天堂医学
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特集 医学研究のUP-TO-DATE
レニン・アンジオテンシン系の糸球体腎炎における役割
鈴木 祐介
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2005 年 51 巻 1 号 p. 2-10

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抄録
近年, アンジオテンシンII (Ang II) の多面的な細胞活性が注目されている. Ang IIは古典的な解釈を超え, その多様性に富む細胞活性化を通して様々な疾患の病態に影響を与えることが明らかになってきた. また, レニン・アンジオテンシン系 (RAS) の作用の一部は, Ang IIが産生される場所に依存している可能性があり, 局所のRASの重要性が議論されている. 糸球体腎炎の病態におけるRASの役割は, 進展および発症という2点に整理される. 進展因子としては, Ang IIによるTGFβ発現増強などを介した糸球体硬化の機序に関わる点と, 尿細管間質の線維化を惹起する主要因子である尿蛋白の調節因子という点が考えられる. 一方でRASは, 白血球浸潤機序に深く関わることも判明し, 炎症の惹起因子として働いていることも考えられている. 原因を問わず糸球体障害により活性化された局所のRASは, 免疫担当細胞の浸潤を誘導することが報告されている. このAng IIを介した白血球浸潤は, 尿細管間質病変と同様に障害に付随する非特異的な炎症性の応答である. 最近われわれは, 糸球体に沈着する免疫複合体の一部は, 沈着すること自体で糸球体局所のRASを活性化し, 抗原特異的T細胞 (Th1タイプ) の糸球体内への浸潤を強力に誘導し, 糸球体腎炎の発症の感受性や予後を規定することを確認した. Ang IIはメサンギウム細胞上のAT1レセプターを介してTh1特異的なケモカインの産生を増加させることから, これがT細胞依存性糸球体腎炎の機序の一つと考えられた. このようにRASは, 免疫現象の一部として腎炎の発症に関わる可能性も考えられ, RAS抑制薬を腎炎に投与する意義は想像以上に大きいかもしれない.
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© 2005 順天堂医学会
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