抄録
背景: 食道表在癌に対する内視鏡治療は標準的治療法として広く普及している. 近年, 食道癌内視鏡治療にESD法 (内視鏡的粘膜下層剥離術) を行われるようになったが, ESDの有用性は十分に検討されていない.
方法: 1998年4月から2007年6月に当院で経験した食道癌に対して内視鏡的粘膜切除術 (EMR) が施行された食道表在癌188例271病変をretrospectiveに検討した. EMR方法は従来法である2チャンネル法, EEMR法, EMR-C法と, 最近普及しつつあるESD法を使用した.
結果: EMR後の局所再発を全体で4.4% (12/271) に認めた. 従来法では8.0% (12/150), ESD法では0% (0/150) であった. 一括切除率はESDでは94.2% (114/121), 従来のEMR法では70% (105/150) であった. 12例のうち手術が1例, 化学放射線治療が1例, 内視鏡治療が10例に行われた.
結論: 食道ESDはEMRより一括切除率が高く詳細な病理学的検討が可能となり, 局所再発率が低いことより, ESDは食道表在癌の治療に有用であると考える.