抄録
医学部を卒業して40年, 定年を迎えるにあたり, 自分の歩んで来た道を振り返り, 専門領域である疫学・衛生学の流れの中でどんな役割を果すことができたかを確かめることを試みた. 疫学では対象が感染症から慢性疾患へと大きく変わり, 方法論も記述疫学から分析疫学に移行し, コンピュータの発達とともに, 多変量解析が一般化してきた. 日本疫学会が設立され, 個人情報の保護への意識がたかまり, 倫理ガイドラインの策定と普及に時間をかけてきた. 衛生学では専門分野としてのアイデンテティの討議を中心に, 日本衛生学会, 衛生学・公衆衛生学教育協議会で責任ある役割を担当してきた. この分野でも倫理や行動規範が問題とされてきており, キリスト者としての立場からの発言・行動が問われていることを感じている.