職域保健において, 生活習慣病を予防するために, 肥満に対する保健指導を行うことが多い. 近年, 様々な生活習慣病につながるメタボリックシンドロームの概念から, 本来は腹部CT撮影による内臓脂肪面積を測定し, 保健指導につなげることが望ましいが, コスト, 検査時間, 被曝の問題などから, 職域の健康診断では困難である. 現在は, 職域での肥満をとらえる指標として, BMI (Body MassIndex) や体脂肪率, 臍ウエスト値 (以下腹囲) がある. 本研究では, 製造業の事務職と営業職590名を対象に, 上下肢での生体インピーダンス法による内臓脂肪測定機能付体脂肪計を用い, 内臓脂肪面積 (以下VFA推定値) を測定収, 生化学検査, 生活習慣病などとの関連について, 共分散構造分析などを用い, 検討を行った.
その結果, BMIは非肥満でもVFA推定値が肥満である者が全体で5.6%, 腹囲は非肥満でもVFA推定値が肥満である者が男性で5.0%存在するなど, 〈かくれ肥満〉が存在していた. また, 生活習慣病リスクとして肥満度の関連が高いことがわかり, その肥満の指標として, VFA推定値の方がBMIや体脂肪率より関連が高く, 腹囲とほぼ変わらない高い関連性を示した. VFA推定値は, 隠れ肥満のスクリーニングなど, 的確に生活習慣病リスク者を把握できることや, 対象者への保健指導のアプローチとしてデジタルに示されることで, 対象者自らがボディーイメージしやすいことからも, 職域における健康管理において有用であるといえる.
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