順天堂医学
Online ISSN : 2188-2134
Print ISSN : 0022-6769
ISSN-L : 0022-6769
原著
培養ヒト表皮角化細胞におけるATP2A2, ATP2C1の各遺伝子発現に対してシクロオキシゲナーゼ (COX)-1, 2阻害剤が及ぼす影響
杉村 亮平黛 暢恭池田 志斈
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 56 巻 6 号 p. 550-557

詳細
抄録
背景 : ダリエ病 (DD) とヘイリーヘイリー病 (HHD) は, 共に表皮細胞間の解離と異常角化を特徴とする常染色体優性遺伝疾患である.DDは小胞体に局在するCaポンプ蛋白であるSERCA2 (sarco/endoplasmic reticulum Ca2+ ATPase type 2 isoform) をコードするATP2A2遺伝子の変異によって, またHHDはゴルジ体に局在するCaポンプ蛋白であるSPCA1 (a homologue of Golgi secretory pathway Ca2+ ATPase) をコードするATP2C1遺伝子の変異によって引き起こされる.DDおよびHHDの臨床症状はUVB照射によって悪化し, 正常培養ヒト表皮角化細胞においてATP2A2およびATP2C1のmRNAの発現量は, UVB照射によって抑制される.一方で, UVB照射はシクロオキシゲナーゼ (COX)-2のmRNA発現を誘導する. 目的 : ATP2A2, ATP2C1の各遺伝子のmRNA発現に対するCOX-1, 2の及ぼす影響を調べる. 方法 : UVB照射によってATP2A2, ATP2C1のmRNA発現を抑制した培養ヒト表皮角化細胞に, セレコキシブ (選択的COX-2阻害薬), SC-560 (選択的COX-1阻害薬), アピゲニン (UVB照射によるCOX-2発現誘導を抑制する物質) を加え, 両遺伝子のmRNA発現量をリアルタイムPCR法にて定量した. 結果 : セレコキシブとアピゲニンはUVB照射によって抑制されたATP2A2, ATP2C1のmRNA発現量を有意に増加させたが, SC-560はmRNA発現量をさらに減少させた. 結論 : COX-2はATP2A2, ATP2C1のmRNA発現を抑制し, 一方でCOX-1は, 両遺伝子の発現の制御に重要な役割を果たし, 表皮角化細胞におけるカルシウム濃度の恒常性の維持に必要である可能性が示唆された.
著者関連情報
© 2010 順天堂医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top