抄録
プランクトンのように簡単な神経系統を持ち一見単純に見える生物も、環境からの情報を微小な脳で瞬時に処理し、その生命維持に重要な行動を決定している。たとえば、ケンミジンコの捕食や回避、matingの決定は、周囲情報の認知に依存することが知られている。反射運動の身体知は、古い脳と呼ばれる部分との関連が指摘されており、単純な脳をもつ生物の行動決定をaffordanceの見地から考察、記述、モデル化することは、身体知のモデル化研究へ示唆を与えると考える。プランクトンの行動選択例とその行動決定モデルを環境情報の認知および処理という観点から考察し、単純な生物の行動研究が身体知やaffordanceの一般原理探求に与え得る寄与について議論する。