抄録
Expertiseは従来、認知主体とは切り離して表現できる、単体の言語的知識として扱われることが多かった。しかし、エキスパートシステムの失敗はこの考え方の限界を物語る。人間は環境の中で知覚し、考え、行動する認知主体である。知覚は行動を支え、行動は知覚を促す。また、知覚は概念を生み、概念の誕生は新しい知覚を促す。つまり、知覚、概念、行動は互いに他を触発する形でカップリングしている。この考え方に従えば、expertiseとは、人間が知覚、概念、行動の面で外界環境とどう関わるかを規定した身体知である。本発表では、創造的な場の認知プロセスを例題にして、身体知としてのexpertiseを議論する。