SNSでの政治的議論にはリベラルと保守の対立という観点から分析が多くされてきた。しかし、党派的なユーザは全体の一部に過ぎず、大多数は政治的関心の薄い非党派的クラスタである。政治的議論における彼らの役割や党派的クラスタとの関心トピックの違いを把握することが議論の相対的理解に重要であるが、既存研究では非党派的クラスタの理解には小さな焦点しか当てられておらず、ネットワーク構造に関する分析が主であった。本研究では、故安倍晋三元首相国葬に関するTwitter上の議論における各クラスタの関心トピック、投稿傾向、ツイートのリーチに着目した。非党派的クラスタは党派クラスタとユーザ数ではほぼ同数あったがツイート数は大きく少なかった。また、彼らは出来事には興味を示すが、ハイコンテクストな議論には大きな興味を示さなかった。さらに、重要な出来事が起こるとツイートがバーストし意見を変えやすい傾向にあった。彼らは党派クラスター間の中心に位置し、中立的なツイートも多く、議論の安定化に寄与していることが示唆された。本研究は非党派的クラスタを考慮した上で政治的議論を分析することの重要性を示している。