人工知能学会全国大会論文集
Online ISSN : 2758-7347
第37回 (2023)
セッションID: 2R5-OS-28a-04
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身体化された心の文化論
文明と共進化する意識について
*下西 風澄
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抄録

近年の認知科学を巡る哲学研究の潮流は、意識の身体性や環境との相互作用に着目している。神経生物学者のフランシスコ・ヴァレラはこうした認知哲学を「身体化された心」と呼び、認知が単なる記号的な情報処理として普遍的に機能するのではなく、それぞれの個別の歴史性を有した身体や、その有機体が行為する状況に深く依存してはじめて捉えることができるという観点に注目した。こうした認知の身体性を広く解釈すれば、認知とは、それを行う認知主体の身体的な習慣、使用する言語、活動する生態環境などの総合的な環境のなかで捉えるべき対象となる。別の言い方をすれば、意識はいわば「文明と共進化」する視座のなかから理解すべき現象でもある。 筆者は『生成と消滅の精神史』(文藝春秋、2022)にて、この「文明と共進化する意識」という観点から、古代・近世・現代の西洋における意識、夏目漱石の文学において描かれた意識を対象に論じたが、本発表では、漱石の作品における意識の描かれ方とその理論における捉え方を比較し、日本における意識の捉え方を考察する。

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© 2023 人工知能学会
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