病院の集中治療部(ICU)は、大手術後や重篤な状況など濃密な医療とケアを要する患者を収容する場所である。多領域にわたる専門性を有する様々な医療スタッフや機器類が頻度高く出入りするほか、患者のベッドやストレッチャーの往来も多く、人やモノの動線は病院内でも特に複雑である。その結果、至る所で動線の交錯や滞留が発生し、医療スタッフの業務効率性に影響を及ぼしているとされるが、改善につながる定量的なエビデンスは乏しい。 また昨今では、AIをベースとした画像認識技術が普及し、動画から自動抽出した移動軌跡データを用いた研究も盛んに行われているが、病院では患者のプライバシー保護等の理由により、研究目的で動画を撮影・活用することは容易でない。 そこで本研究では、比較的安価かつ小型の2次元レーザスキャナを用いて、集中治療部における点群データを取得し、それをもとに医療スタッフの行動を分析する手法を開発した。具体的には、2023年12月19日から2024年1月10日までの約3週間、T大学病院のICUに設置した18台のレーザスキャナで取得したデータを用いて、移動軌跡の抽出や分類、行動パターンの分析の可能性を示した。