2012 年 24 巻 1 号 p. 39-43
着生植物は他の植物体の上で生育する植物で,その種数は陸上植物の1割以上を占め,着生植物の出現と多様化が,植物の高い種多様性をもたらした一要因と考えられる.これまでシノブ科および近縁種を用いて研究を行い,シノブ科および近縁種の着生植物は,地生植物からつる植物あるいは半着生植物と段階をへて進化したことを,系統学的,形態学的証拠から提唱してきた.この進化には,根茎を覆う鱗片の形態変化や根茎の二型分化などの形態変化が関わったと推定された.中には地生種とは著しく変わった形態をもつ種もみられた.例えば半着生植物Oleandra pistillaris(ツルシダ科)では,葉を輪生状に形成する直立茎と,不定期に葉を形成する匍匐茎に二型分化し,後者では時に葉を形成せず著しく伸長し,異様に長い節間が観察されている.別の半着生植物Nephrolepisでも,葉を束生する短立した茎と,葉をつけず長く這うストロンの二型が知られる.このことから,これらの半着生植物では,茎の重要な機能である「葉形成」と「茎の伸長」の2つの機能が分化し,生活場所の地面から樹上への移行を容易にしていると考えられる.このような形態は,葉形成と茎伸長が同時進行する他の生活形をもつ植物とは対照的である.