PLANT MORPHOLOGY
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24 巻, 1 号
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特集I イメージングおよびその関連技術と植物学
  • 峰雪 芳宣, 大隅 正子
    2012 年 24 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    第75回日本植物学会大会において,日本植物形態学会と認定NPO法人綜合画像研究支援共催で「イメージングおよびその関連技術と植物学」と題したシンポジウムが開催された.本特集は,このシンポジウムのシンポジストによる,植物学の発展に寄与して来た,あるいは寄与しているイメージングとその関連技術についての紹介である.
  • 高木 慎吾
    2012 年 24 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    車軸藻節間細胞における恒常的原形質流動,オオセキショウモ葉肉細胞における原形質流動光誘導過程について,ストロボスコープ型遠心顕微鏡による解析結果を解説し,近年明らかになってきたモーター蛋白質,小胞体の関与について考察した.特に,車軸藻節間細胞の流動停止時に細胞質内質とアクチン繊維との間に形成される架橋構造,細胞質内質の力学的性質に注目した.
  • 玉置 大介, 峰雪 芳宣
    2012 年 24 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    細胞分裂時に細胞の特定の場所(局所)における分子の挙動や構造変化をライブイメージングで観察していると, 細胞の全体像が同時には観察できない.その為,この局所での変化が,実際に細胞分裂のどの現象と対応しているのか判定できないことがある.そこで,私たちは細胞表層の局所における分子やオルガネラの挙動の観察と並行して, 細胞全体がどのような状態か観察できる “局所・大局ライブイメージング顕微鏡システム(Global-Local Live Imaging Microscope System, GLIM System)”を開発した.本総説ではGLIMシステムの概要と,実際に数種の植物細胞についてGLIMシステムを用いた応用例を紹介し,今後のGLIMシステムの展望について考えたい.
  • 佐藤  良勝, 門田  明雄
    2012 年 24 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    植物細胞内の葉緑体は光環境に応じて配置が変わる.葉緑体光定位運動と呼ばれるこの運動はアクチン繊維に依存することが知られてきたが,その運動メカニズムは分かっていなかった.私たちは,微光束照射装置付きの蛍光イメージング装置を自作し,GFP-mTalinでラベルされた形質転換植物を用いて葉緑体運動中のアクチン繊維の動態を解析した.その結果,原形質流動に働く長いアクチン繊維とは別に葉緑体表面上で短いアクチン繊維の重合脱重合が起きていることを見出した.私たちは,葉緑体上のこの短いアクチン繊維を葉緑体アクチン繊維と名付けた.葉緑体アクチン繊維は,光刺激による葉緑体の一方向的な運動の際には葉緑体上の進行方向前端に偏在し,偏在が解消されると葉緑体の運動は停止した.また,葉緑体光定位運動に異常を生じるシロイヌナズナの変異体株(chup1)においては葉緑体アクチン繊維が観察されなかった.さらに,葉緑体アクチン繊維はヒメツリガネゴケの葉緑体光定位運動の際にも観られた.これらのことから,葉緑体光定位運動は葉緑体上で働くアクチン繊維を用いたユニークな運動メカニズムにより制御されていることが示唆された.
  • 豊田 正嗣, 森田(寺尾) 美代, 池田 憲文, 田坂 昌生
    2012 年 24 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    地球上で生命が誕生して以来,生物と重力は切っても切れない関係にある.重力は我々の生活空間を規定し,生物はその重力場の中で適応し,進化してきた.多くの植物は重力の「大きさ」と「方向」を感受し,細胞壁の強度を調節したり,器官を屈曲させたりと形態を変化させる.我々はこれまでに,植物の重力応答の1つである重力屈性反応を,分子遺伝学的手法および2つの特殊な顕微鏡を用いて研究してきた.その顕微鏡の内1つは,植物標本を垂直に保持したまま蛍光観察ができる「垂直ステージ共焦点レーザー顕微鏡」であり,重力の方向を変化させた時の細胞内の反応を視るのに適している.もう1つは,植物標本を遠心しながらリアルタイムで明視野観察ができる「遠心顕微鏡」であり,重力の大きさを変化させた時の細胞内の反応を視るのに適している.近年,様々な顕微鏡法・イメージング法が開発され,「視る」ことの重要性が益々高まってきている.本稿では,普段論文ではあまり詳しく記述されない装置(顕微鏡)や観察方法に力点を置いて,重力という地球上に普遍的に存在する力を研究対象にした時,どのような点を克服しなくてはならないか,どのような装置が必要か,そして何がどのように視えるのか,を開発の秘話を含めて紹介する.
  • 筒井 大貴, 東山 哲也
    2012 年 24 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    マイクロインジェクション法は狙った細胞に目的の物質を導入できることから,細胞生物学においてポピュラーな手法として用いられてきた.しかし,主に動物細胞で用いられてきた技術であるために,高い膨圧を持つ植物細胞では原形質が針内部に流入してしまい針が詰まってしまうことが問題であった.我々が開発したレーザー熱膨張式マイクロインジェクション(Laser-assisted Thermal-expansion Microinjection,LTM法)は,針内部のレーザー吸収剤の熱膨張圧によって原形質の流入を防ぐことができるために,針が詰まることなく1本の針で連続してインジェクションすることが可能となった.また,従来の方法では十分な圧力が得られないために扱うことができなかった,先端径が0.1 μm程度の針を用いることもできるため,細胞へのダメージも少なくなった.使用用途は植物細胞に限らず,出芽酵母のような微小細胞や細胞核・オルガネラなどにもインジェクションが可能である.本稿ではLTM法の原理とともに,これまでの利用例についてもご紹介したい.
特集II おかしな形はかしこい形?ー環境に合わせた植物形態の進化ー
  • 堤 千絵, 山田 敏弘
    2012 年 24 巻 1 号 p. 37-38
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    27万もの種類が知られる陸上植物は,地球上の様々な環境に進出し,生育環境に適した形態を進化させてきた.この特集では,様々な環境に生育する植物の,普通とは異なる形がどのように進化してきたのかを紹介する.また,これらの研究例を通じて,非モデル植物を用いた形態研究の展望を示す.
  • 堤 千絵, 加藤 雅啓
    2012 年 24 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    着生植物は他の植物体の上で生育する植物で,その種数は陸上植物の1割以上を占め,着生植物の出現と多様化が,植物の高い種多様性をもたらした一要因と考えられる.これまでシノブ科および近縁種を用いて研究を行い,シノブ科および近縁種の着生植物は,地生植物からつる植物あるいは半着生植物と段階をへて進化したことを,系統学的,形態学的証拠から提唱してきた.この進化には,根茎を覆う鱗片の形態変化や根茎の二型分化などの形態変化が関わったと推定された.中には地生種とは著しく変わった形態をもつ種もみられた.例えば半着生植物Oleandra pistillaris(ツルシダ科)では,葉を輪生状に形成する直立茎と,不定期に葉を形成する匍匐茎に二型分化し,後者では時に葉を形成せず著しく伸長し,異様に長い節間が観察されている.別の半着生植物Nephrolepisでも,葉を束生する短立した茎と,葉をつけず長く這うストロンの二型が知られる.このことから,これらの半着生植物では,茎の重要な機能である「葉形成」と「茎の伸長」の2つの機能が分化し,生活場所の地面から樹上への移行を容易にしていると考えられる.このような形態は,葉形成と茎伸長が同時進行する他の生活形をもつ植物とは対照的である.
  • 片山 なつ
    2012 年 24 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    多くの被子植物では,胚発生で生じた茎頂分裂組織と根端分裂組織が両極で無限成長し,鉛直軸をもった植物体が形成される.カワゴケソウ科は熱帯・亜熱帯の急流の岩上に生育し,そのため激しい水流と固い岩により鉛直方向への成長が妨げられ,水平方向に成長する扁平な植物体を形成する.祖先的なトリスティカ亜科では,実生には茎頂分裂組織と根端分裂組織が存在し,鉛直成長を行う.一方で,著しく多様化したカワゴケソウ亜科では,実生の段階で茎頂分裂組織と根端分裂組織の縮小・喪失が起き,胚軸から側方に生じた不定根が不定シュートを形成しながら水平方向へ成長する.トリスティカ亜科とカワゴケソウ亜科における胚発生の比較発生学的研究から,実生の茎頂分裂組織と根端分裂組織の縮小・喪失は,それぞれの分裂組織の始原に関わる細胞の分裂パターンの変更が引き起こしたことが明らかとなった.本稿では,カワゴケソウ科の水平ボディプランの進化に関わった鉛直成長の喪失と,それに関わる2つの分裂組織の発生機構の変更について概論したい.
  • 角川(谷田辺) 洋子, 堤 千絵
    2012 年 24 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    ヤシャゼンマイはゼンマイから種分化した渓流沿い植物であり,適応的な形質と考えられる細葉形質をもつ.細葉形質の遺伝的背景を明らかにするため,推定F1雑種のオオバヤシャゼンマイからF2雑種を作成し,三出複葉になった時点で,計6形質を計測した.その結果,側羽片の基部の角度と下側最下の側脈および上側最下の側脈から分岐する支脈数の間に相関がみられたが,ばらつきは大きく,相関係数は0.520および0.426であった.また,分子マーカー解析により,側羽片の基部の角度に影響を与える遺伝子と連鎖していると考えられる遺伝子座がみつかった.しかし,この遺伝子座における遺伝子型と下側最下の側脈から分岐する支脈の数などの他の形質の間には相関はみられなかった.
  • Hokuto Nakayama, Naomi Nakayama, Akiko Nakamasu, Neelima Sinha, Sei ...
    2012 年 24 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    The leaves of some plant species are able to change their morphology in response to environmental conditions. This phenomenon is termed heterophylly. Various aquatic plants exhibit drastic changes in leaf shape in response to submerged aquatic conditions. Heterophyllic variation ranges from mere modification of leaf width to drastic alteration in the outline of leaves and is interpreted as an adaptation to aquatic habitats. Although this phenomenon is widely observed among angiosperms, there is limited information on the regulation of heterophyllic switch in leaf development. Here, we have reviewed existing knowledge on leaf development and heterophylly and have introduced Neobeckia aquatica as an emerging model to elucidate the mechanisms underlying heterophylly.
学会賞受賞者ミニレビュー
  • 鮫島 正純
    2012 年 24 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    細胞性粘菌Dictyostelium discoideumにおいては,胞子の核と細胞質の両方に出現する新奇アクチンロッドが,胞子の休眠の維持と生存に関わっている.ロッドは,六角形に配列した直径約13nmのアクチン小管から構成されており,さらに,S-アデノシル-L-ホモシステインヒドロラーゼを構成成分としている.アクチンロッドに加えて,胞子の細胞質にはG-アクチンと脂肪滴の複合体が形成される.胞子のアクチン分子の半分はチロシン燐酸化されており,この高レベルなアクチンリン酸化は胞子の安定化に必須である.アクチンの脱リン酸化のトリガー分子はD-グルコースである.オジギソウMimosa pudica L. の主葉枕においても,アクチンはチロシン燐酸化され,リン酸化の変化は葉柄の屈曲と相関している. さらに,真正粘菌Physarum polycephalumの休眠体も,アクチンは燐酸化されている. D. discoideumおけるアクチンロッドの形成とアクチンのリン酸化は,MADS-box 遺伝子であるSrfAによって制御されている.
  • 厚井 聡, 片山 なつ
    2012 年 24 巻 1 号 p. 73-80
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    カワゴケソウ科は急流中の岩場に生育する水生被子植物である.特異な形態進化を起こして極限環境へ適応しており,根から生じるシュートもそのひとつである.カワゴケソウ科の基部系統群のトリスティカ亜科とウェッデリナ亜科では,他の被子植物と同様,茎頂分裂組織の働きにより葉が作られる.しかし,派生系統群のカワゴケソウ亜科には明瞭な茎頂分裂組織が存在せず,若い葉原基の基部から新たな葉が生じる.遺伝子発現パターンの比較から,カワゴケソウ亜科の「葉」は,茎頂分裂組織が葉へ分化した器官であることが明らかとなった.本総説では,これらの研究から明らかになったカワゴケソウ科の特異なシュート形態形成の進化プロセスについて述べたい.
  • 吉田 大和, 黒岩 晴子, 三角 修己, 吉田 昌樹, 大沼 みお, 藤原 崇之, 八木沢 芙美, 廣岡 俊亮, 井元 祐太, 松下 一信, ...
    2012 年 24 巻 1 号 p. 81-88
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    植物は光合成によってCO2を固定することで温暖化を防ぐとともに,O2を放出し,糖の合成を通じて食料,燃料などを生産し,地球上のほとんど全ての生物の生存を支えている.この機能の中心は分裂・増殖する葉緑体(色素体)である.葉緑体は約20億年前に宿主細胞に共生したシアノバクテリアの子孫と考えられており,分裂によって増殖するが,そのしくみは長らく謎であった.1986年に著者らは葉緑体の分裂面に,分裂装置としてのリング構造を発見し,色素体分裂リング(PDリング)と名付けた.PDリングは直径7 nmの繊維の束で出来ており,繊維同士の滑動機構によってリングが収縮し,葉緑体を分裂させることが示唆されたが,繊維の構成物は明らかでなかった.今回,我々は真核生物の「基」となる原始紅藻Cyanidioschyzon merolae(シゾン)を用いて,PDリングを単離し,ポストゲノム情報や遺伝子破壊技術を基盤に構成成分を解析したところ,PDリングの繊維は糖で出来ており,PDリング内の糖合成タンパク質plastid-dividing ring 1(PDR1)を使って合成されることが分かった.葉緑体はポリグルカン繊維をダイナミン分子が滑動させることによって収縮し,分裂することが解明された.PDR1の局在を示す免疫電子顕微鏡写真はScience誌の表紙となった.
  • 植田 美那子
    2012 年 24 巻 1 号 p. 89-96
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    被子植物はさまざまな形態を有するが,それらは全て体軸に依存して形成される.体軸のなかで最も早期に形成されるのが頂端―基部軸であり,その発生は受精卵の極性にまで遡ることができる.受精卵は不等分裂をおこない,生じた頂端細胞と基部細胞が個々の発生運命に従って精緻な細胞分裂・分化を経ることで,植物体の茎頂―根端パターンが構築される.しかしながら,受精卵の極性化や不等分裂の分子機構はいまだ不明であり,それらがその後のパターン形成にどう関与するかも分かっていなかった.そんななか,我々はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の受精卵と基部細胞の系譜で働くWRKY2転写因子が,受精卵の極性化と胚のパターン形成をともに制御することを見出した(Ueda et al. 2011).本総説では,その発見の経緯を概説するとともに,WRKY2を起点とする転写因子カスケードが頂端―基部軸を形成するしくみを明らかにするためには,今後どのように研究を展開すべきかについて,近年開発の進んできた新たな実験系を紹介しつつ考察したい.
  • 浜村 有希
    2012 年 24 巻 1 号 p. 97-103
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    重複受精は被子植物に特徴的な生殖機構であり,農業的にも意義があるだけでなく生物学的にも大変興味深い現象である.1つの花粉に2つある精細胞のうち一方が卵細胞と受精して胚となり,もう一方が卵細胞の隣にある中央細胞と受精して胚の栄養器官となる胚乳を形成する.これまで重複受精過程の精細胞の動態は捉えられておらず,どのような経路をたどって受精していくのか,なぜ2つの精細胞が別々の受精相手に受精できるのかという,根本的な疑問が解決されていない.この10年間のライブイメージング技術の発達により,これまで謎に包まれていた重複受精過程の精細胞の動きが明らかにされた.本総説では,精細胞の動態に着目したライブイメージング解析と分子遺伝学的解析を組み合わせて花粉管の内容物放出から配偶体の融合までの重複受精過程について述べたい.
  • 八木沢 芙美
    2012 年 24 巻 1 号 p. 105-109
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/30
    ジャーナル フリー
    液胞は,細胞内分解をはじめとする多様な機能を持つ.液胞は,小胞体やゴルジ体から新しく合成されうる(Hoh et al. 1995, Catlett and Weisman 2000).それにも関わらず,液胞は,細胞分裂時に母細胞から娘細胞へと分配される.液胞の分配は,細胞が分裂直後から正常に機能するために必要であると考えられる.これまでに知られている液胞の分配機構は,V型ミオシンとアクチンに依存するものであった.これに対し,アクトミオシン系を持たない原始紅藻Cyanidioschyzon merolaeでは,液胞がミトコンドリアに結合することで液胞の分配がおこる.本稿では,真核生物で知られる液胞の分配機構を紹介し,今後の展望について述べる.
原著論文
日本植物形態学会第23回大会(東京)ポスター発表要旨
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