PLANT MORPHOLOGY
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学会賞受賞者ミニレビュー
アクチン細胞骨格に依存した細胞性粘菌の休眠胞子安定化
鮫島 正純
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2012 年 24 巻 1 号 p. 65-71

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抄録

細胞性粘菌Dictyostelium discoideumにおいては,胞子の核と細胞質の両方に出現する新奇アクチンロッドが,胞子の休眠の維持と生存に関わっている.ロッドは,六角形に配列した直径約13nmのアクチン小管から構成されており,さらに,S-アデノシル-L-ホモシステインヒドロラーゼを構成成分としている.アクチンロッドに加えて,胞子の細胞質にはG-アクチンと脂肪滴の複合体が形成される.胞子のアクチン分子の半分はチロシン燐酸化されており,この高レベルなアクチンリン酸化は胞子の安定化に必須である.アクチンの脱リン酸化のトリガー分子はD-グルコースである.オジギソウMimosa pudica L. の主葉枕においても,アクチンはチロシン燐酸化され,リン酸化の変化は葉柄の屈曲と相関している. さらに,真正粘菌Physarum polycephalumの休眠体も,アクチンは燐酸化されている. D. discoideumおけるアクチンロッドの形成とアクチンのリン酸化は,MADS-box 遺伝子であるSrfAによって制御されている.

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© 2012 日本植物形態学会
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