PLANT MORPHOLOGY
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特集II 超イメージング技術による生物科学のフロンティア
顕微鏡画像を用いた根端成長の数理モデル解析
岩元 明敏杉山 宗隆
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2013 年 25 巻 1 号 p. 67-71

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抄録

植物の根端成長は遺伝要因や環境要因によって大きな影響を受けるが,そうした影響は細胞増殖と体積増大の変化を反映している.この両者について正確な空間プロファイルを得るには,細胞動力学的解析が有効である.これは器官の成長を「細胞の流れ」としてとらえる解析法であり,根端成長に適用すると根の任意の位置でどの程度細胞体積が増大し,細胞が増殖しているかが定量的に示される.具体的には,まず定常的な成長下にある根から,ビデオマイクロスコープを用いて一定時間間隔で根端画像を取得し,これらの画像を解析することで体積増大(伸長成長)速度の空間プロファイルを決定する.また,細胞増殖については,微分干渉顕微鏡を用いて撮影した根端の皮層細胞列の画像を解析し,個々の細胞の長さを決定し,体積増大速度のデータと合わせることで増殖率の空間プロファイルを算出する.こうして得られたデータは,それ自体,根の成長に関して重要な基本情報を提供するが,私達はさらに,独自の数理モデルによるデータ解析を行って,隠れた成長特性の究明を試みている.このモデルは,器官が成長するための活動量がその器官が持つ細胞数に比例すること,活動量が細胞増殖,体積増大,器官維持の総和となることなどを仮定したもので,器官成長の各側面(細胞増殖,体積増大,器官維持)のコストを見積もることができる.本総説では,細胞動力学的解析の具体的な方法論とそのデータを用いた数理モデル解析を紹介する.

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© 2013 日本植物形態学会
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