2013 年 25 巻 1 号 p. 61-66
近年顕微鏡技術の発達により,生きたままの組織や細胞内を観察するライブイメージングが可能となった.一方で,観察対象を自由自在に操作することを目的としたハンドリング技術には多くの課題が残されていた.MEMS(Micro-Electro-MechanicalSystems)に代表される微細加工技術では,組織や細胞と同じサブミクロンスケールの微小な実験システムをカスタムメイドで製作することが可能である.本総説では,微細加工を施したマイクロチップを,酵素やモータ蛋白質など生体分子観察・操作に応用した例と,根や花粉管などの植物試料分析に応用した最新の研究を紹介する.最後に,従来のバルク計測系に比べての利点,一分子計測技術によるナノスケール操作や光造形技術によるミリスケール加工との併用を含めた今後の可能性について述べる.