PLANT MORPHOLOGY
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学会賞受賞者ミニレビュー
オルガネラ分裂・分配機構の解明に向けた単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolaeにおける解析技術開発
藤原 崇之
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2017 年 29 巻 1 号 p. 91-97

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抄録

真核細胞が機能するための基本的なオルガネラとして細胞核,小胞体,ゴルジ体,ペルオキシソーム,ミトコンドリアがあり,植物細胞にはそれらに加えて葉緑体が存在する.真核細胞の増殖機構を解明するためには,細胞周期を細胞核の分裂周期として捉えるのではなく,すべてのオルガネラの分裂・分配周期として捉え直し,分子機構を解明していく必要がある.しかしながら,細胞核以外のオルガネラの分裂・分配機構はほとんど知られていない.哺乳類の培養細胞や陸上植物の細胞では,細胞核以外の各オルガネラの数が多く,複雑な形状を為し,且つそれらの分裂・分配に同調的な挙動を見出すことが難しいからである.著者はオルガネラ分裂・分配を解析するためのモデル生物として,単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolae(シゾンと略す)に着目した.シゾンは非常に単純な生物で,最少セットのオルガネラのみを持ち,これらを同調的に分裂・分配させられること,遺伝子数が自立増殖できる真核生物として最少クラスであり,解析すべき遺伝子が限られていること,形質転換法系が開発されていることが大きな理由である.著者は,シゾンのオルガネラ分裂・分配を解析するための基盤整備として,ターゲティングによる形質転換株作成法の確立,分子マーカーによる細胞周期の同定,遺伝子発現プロファイルの構築を行い,このプロファイルを基盤に液胞分配関連遺伝子を発見し液胞分配機構の解析を行った.本稿ではこれらを紹介する.

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© 2017 日本植物形態学会
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