2018 年 30 巻 1 号 p. 5-14
スフィンゴ脂質は真核生物の生体膜を構成する主要な脂質の1つであり,その疎水骨格セラミドは長鎖塩基と脂肪酸から構成される.長鎖塩基の分解は生体内のスフィンゴ脂質の恒常性維持のために重要である.筆者らは最近,長鎖塩基の代謝経路の詳細(反応および関与する遺伝子)を解明した.その中でも4位に水酸基を持つ長鎖塩基(フィトスフィンゴシン)は代謝過程においてα酸化を受け,奇数鎖脂肪酸へ変換するというユニークな代謝を受けることを明らかにした.これまで脂肪酸α酸化はペルオキシソームで行われるというのが通説であったが,筆者らが見出したα酸化は小胞体で行われるという全く新しいものであった.本稿では,スフィンゴ脂質の構造,長鎖塩基の代謝,脂肪酸α酸化について,筆者らが酵母と動物細胞を用いた解析から明らかにした最新の知見を紹介する.また,筆者らの知見に基づいて植物での長鎖塩基の代謝についても考察する.