PLANT MORPHOLOGY
Online ISSN : 1884-4154
Print ISSN : 0918-9726
ISSN-L : 0918-9726
特集
電子顕微鏡で観る渦鞭毛藻類の細胞外被の形成過程
関田 諭子堀口 健雄奥田 一雄
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 31 巻 1 号 p. 11-18

詳細
抄録

渦鞭毛藻の遊走細胞はアンフィエスマと呼ぶ特有の細胞外被をもつ.アンフィエスマは原形質膜と原形質膜を裏打ちする多数の扁平なアンフィエスマ小胞(av)とその下側に配列する微小管からなる.有殻渦鞭毛藻では,avの内部に板状構造(鎧板)を含む.鎧板のパターン(形・数・配列)は種によって決まっており,属および種を分類するための重要な形質の一つである.渦鞭毛藻の細胞外被は細胞の周縁部全体に平面的に拡がっているため,超薄切片法による細胞断面の観察だけでは細胞外被の全体構造や詳細な形成過程を明らかにすることは困難である.本稿では,有殻渦鞭毛藻 Scrippsiella hexapraecingula を用い,フリーズフラクチャーレプリカ法により観察した平面的なavの発達と超薄切片法による細胞断面像と併せて渦鞭毛藻の細胞外被の形成過程の全貌を示す.さらに,高圧処理を用いた研究によって,渦鞭毛藻類の表層微小管と鎧板パターンの関係について示す. 本種の遊走細胞は細胞外被を脱ぎ捨てて不動化し,その不動細胞の中で形成される新しい遊走細胞はavを再生する.不動細胞はavの元になる小胞を形成し始め,小胞同士は一定の領域内で融合してavに発達する.avが発達する領域は鎧板のパターンと一致する.鎧板は泳ぎ出た後で形成される.一方,細胞を高圧処理することによって微小管を破壊すると,その細胞から泳ぎ出た遊走細胞の鎧板パターンは顕著に変異する.

著者関連情報
© 2019 日本植物形態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top