PLANT MORPHOLOGY
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学会賞受賞者ミニレビュー
ライフサイクルと微細なかたちに魅せられて
野崎 久義
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2019 年 31 巻 1 号 p. 37-45

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抄録

生殖を繰り返して形態が変化し,また同じステージに戻る「ライフサイクル」は生物の基本的で興味深い特性である.筆者が淡水産緑藻を研究材料にした理由は,これらは培養が容易でライフサイクルの研究が実験室で可能だったからである.本稿では筆者がこれまでに継続してきた淡水産藻類のライフサイクルと微細なかたちに関する研究内容を紹介する.前世紀に著者が実施した数多くの群体性ボルボックス目を対象とした光学顕微鏡レベルのライフサイクルの研究成果は,その後に我々が形態・遺伝子・ゲノムデータを用いて実施した系統解析,性特異的遺伝子および多細胞化の研究を触発し,礎となった.一方,単細胞性緑藻 Carteria,灰色藻 CyanophoraGlaucocystis の電子顕微鏡を用いて我々が明らかにした細胞の3次元立体微細構造は,新たな「微細なかたち」であり,それぞれの属における種レベルの分類に大きく貢献した.最近のフィールド調査で採取された群体性ボルボックス目の「ミッシングリンク藻類」はライフサイクルで非常に興味深い形態的特性を示したので,淡水藻類の形態と多様性に関する分野の今後の発展には更なるフィールド調査が期待される.

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© 2019 日本植物形態学会
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