2019 年 31 巻 1 号 p. 31-35
コメにはデンプンのみならず,約7~8%の貯蔵タンパク質が含まれている.コメ貯蔵タンパク質は溶媒溶解性の違いによってグルテリン,プロラミン,グロブリンの3種類に分類され,これらは澱粉性胚乳に存在する2種のプロテインボディ(PB)に蓄積されている.グルテリンとグロブリンは液胞由来のII型プロテインボディ(PBII)に,一方プロラミンは小胞体由来のI型プロテインボディ(PBI)にそれぞれ蓄積されている.コメ貯蔵タンパク質は日本酒の醸造特性やコメの製パン特性等に大きく寄与することから,貯蔵タンパク質の合成,輸送,蓄積に関わる因子の機能解明は,新たな加工特性を有したコメの開発につながり,ひいてはコメの需要拡大に貢献できると期待される. 我々はこれまでに,イネ胚乳細胞内におけるグルテリンの合成・輸送・蓄積に関わる因子を複数同定し,解析してきた.組織学的解析結果をもとに,グルテリンの細胞内輸送機構についての知見を紹介する.