PLANT MORPHOLOGY
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学会賞受賞者ミニレビュー
分裂組織における細胞サイズの制御機構
江崎 和音塚谷 裕一
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2020 年 32 巻 1 号 p. 45-51

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抄録

生物の最小の構成単位である細胞は,組織ごとにそのサイズを制御されている.特に分裂組織の細胞を見ると,植物・動物を問わず均一な細胞サイズを示すことが知られている.シロイヌナズナの花序分裂組織での観察から,多くの細胞が非対称な細胞分裂によって細胞サイズのばらつきを生みだす一方で,このばらつきはその後,細胞周期の長さおよび相対成長速度の調節によって解消されていることが明らかとなった.このような分裂組織でのサイズ制御には,細胞分裂と細胞成長とのバランスが欠かせないが,細胞はどのような仕組みによって均一な細胞サイズを維持するのだろうか.シミュレーションと実験を組み合わせた複数の研究から,細胞サイズ依存的に細胞周期の進行を制御することが,細胞サイズの維持に重要であると示唆されている.また,周囲の環境やストレスに応じて細胞サイズを適切に調節することも必要である.ここにはTORの関与する経路,植物ホルモンなどが細胞周期や細胞成長に作用することが考えられる.さらに分裂組織の細胞サイズは,器官形成時の遺伝子発現のパターンや器官レベルでの物質の濃度勾配の形成にも影響することから,細胞サイズ制御が器官形成において重要な役割を持つことが示唆される.

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© 2020 日本植物形態学会
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