PLANT MORPHOLOGY
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学会賞受賞者ミニレビュー
葉緑体核様体の分子構造と進化
小林 優介
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2020 年 32 巻 1 号 p. 75-82

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抄録

葉緑体(色素体)は光合成によって地球上のほぼ全ての生態系を支えている.葉緑体には,シアノバクテリア様の祖先から引き継がれた独自のゲノムDNAが存在し,これらは光合成装置の構築や植物の生存上必須なタンパク質をコードしている.葉緑体DNAは裸でストロマを浮遊するのではなく,多様なタンパク質によって折りたたまれて葉緑体の染色体に相当する「核様体」として纏められている.これまで,葉緑体核様体の構成因子が進化の過程でどのように変遷したのか,さらには葉緑体核様体形態を制御するメカニズムはほとんど明らかとなっていなかった.そこで我々は緑藻から被子植物までの各進化段階を代表するモデル生物について,葉緑体核様体構成タンパク質の変遷を解析し,進化の過程でバクテリア由来の葉緑体核様体因子が,宿主由来の因子へと漸進的に置換されてきたことを明らかにした.また,代表的な葉緑体核様体タンパク質である亜硫酸還元酵素(SiR)が葉緑体核様体に局在するにはSiRのC末端ペプチドが重要であることも示した.さらに我々は,世界に先駆けて葉緑体核様体の維持・分配機構の解析にも着手し,葉緑体核様体形態異常のクラミドモナス変異体moc1の原因遺伝子が葉緑体型Holliday ジャンクション切断酵素遺伝子であること発見し,MOC1遺伝子は緑藻から陸上植物まで広く保存され,葉緑体分裂や分化に伴う核様体の分離に欠かせないことを示した.

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© 2020 日本植物形態学会
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