2020 年 32 巻 1 号 p. 83-90
植物を取り囲む環境ストレスは多岐にわたるが,その多くはDNA損傷を介して成長阻害をするという共通点がある.そのため,植物が変動する環境下で生育し続ける上でDNA損傷応答は極めて重要である.植物に限らず,真核生物においてDNAはヒストンとともに細胞核内で高次構造体クロマチンを形成している.そのため,DNA損傷が修復されるためには損傷クロマチン領域のダイナミックな構造変換が必要となるが,植物におけるその制御機構に関する知見はほとんどない.本研究は,植物のDNA損傷応答におけるクロマチン構造変換の制御機構の解明を目的とし,ライブイメージング技術を軸として研究を展開した.シロイヌナズナのDNA損傷応答におけるクロマチン構造の動態変化を観察できるライブイメージング系を構築し,この系を利用した逆遺伝学的スクリーニングにより,DNA損傷応答におけるクロマチン構造制御の必須因子としてクロマチンリモデリング因子RAD54を同定した.さらに,RAD54はDNA損傷に伴い細胞核内でドット状の構造体を形成することを見出し,植物のDNA損傷応答を1細胞レベルで可視化できるマーカーとして確立した.また,RAD54の新規相互作用因子としてヒストン脱メチル化酵素LDL1を同定し,損傷クロマチン領域におけるRAD54の動態制御にはLDL1によるヒストン修飾H3K4me2の脱メチル化が重要であることを明らかにした.