PLANT MORPHOLOGY
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特集2 「植物の柔軟な形態変化を理解するための計測と理論」
葉序の形態特徴量とパターン生成機構との関係
米倉 崇晃 杉山 宗隆
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2021 年 33 巻 1 号 p. 59-65

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抄録

植物の葉序には,規則的で美しい,様々なパターンが見られるが,その多様性は限定的で,多くはいくつかのタイプに集中している.葉序パターンについての研究は,古くから形態学的な解析を中心に行われ,多くの記載が積み重ねられてきた.現在では葉序パターンは,葉原基が自身の近傍における新たな葉原基の形成を阻害し,それによって葉原基間の位置関係が規定されることで自発的に生成すると考えられており,こうした阻害作用を基礎とする数理モデルを用いたコンピュータシミュレーションで、主要な葉序パターンの再現も確認されている.さらに近年の分子生物学実験により,この阻害作用の実体がオーキシンの奪い合いであることも示され,葉序パターン生成機構の枠組みはかなりの程度明らかになっている.この枠組みを前提にすれば,個々の葉序パターンについて,形態的特徴の解析から当該パターンの決定要因を探ることも可能と考えられる.本稿では,この新しいアプローチの提案を主題とし,まず葉序パターンの形態特徴量とその測定法について述べ,葉序パターン生成機構の数理モデルについて概説した後で,形態特徴量から数理モデルのパラメータを推定する方法について論じる.

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© 2021 日本植物形態学会
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