PLANT MORPHOLOGY
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細胞性粘菌胞子の休眠におけるアクチン細胞骨格の役割
鮫島 正純
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1999 年 11 巻 1 号 p. 42-51

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抄録

要旨:細胞性粘菌Dictyostelium discoideumの休眠胞子においては、アクチンの約50%がチロシン燐酸化されているとともに、アクチンロッドが存在する。燐酸化は胞子の小胞輸送をはじめとする細胞運動を低下させることを通じて休眠の維持に関与しており、一方、脱燐酸化は胞子の発芽に関するシグナル伝達の上流に位置すると予測された。またアクチン脱燐酸化にはグルコースの取り込みとその代謝を介したATP合成が必要であったため、胞子発芽に必要な小胞輸送はグルコースに依存していると推定された。これは膵ベータ細胞におけるインシュリン分泌機構に類似している。アクチンロッドはアクチン繊維の約二倍の太さの小管が束化したものであった。アクチンを含む管状構造は初めての知見である。ロッドは胞子の形態を維持するとともに、発芽時にアクチンが再構築される際のリザーバーとして機能していると推定される。このようにD.diseoideum胞子の休眠はアクチン細胞骨格によって積極的に制御されている。

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© 日本植物形態学会
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