PLANT MORPHOLOGY
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ブナ目における断続的な花粉管伸長:特にオオバヤシャブシ(カバノキ科ハンノキ属)について
十河 暁子戸部 博
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2005 年 17 巻 1 号 p. 23-30

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抄録

要旨:ブナ目は受粉時に子房・胚珠の組織が未熟で,受粉から受精までに数週間から1ヶ月以上の時間を要するという特徴を持っている.我々はブナ目の3科3種の受粉から受精までの花粉管伸長と雌しべの組織の発生を観察することによって,花粉管が胚珠・胚嚢の発達にしたがって伸長と停滞を繰り返す断続的な伸長を行っていることを明らかにした.トクサバモクマオウ,オオバヤシャブシでは共通して受粉時には子房はほとんど分化しておらず,花粉管は柱頭から花柱まで伸長して花柱で停滞する.っまり,花柱までの花粉管誘導は胚珠や胚嚢の存在は全く関係ない.子房への花粉管伸長は,若い胚珠が形成される時期(トクサバモクマオウ・オオバヤシャブシでは胚嚢分化期,ヤマモモでは大胞子母細胞期)に起こる.また3種に共通して,胚珠組織内への花粉管伸長は胚嚢が分化しているが未熟な時期に起こり,花粉管は胚嚢が成熟するまでの間,胚珠組織内で停滞する.したがって,成熟した胚嚢は胚珠組織内部までの花粉管誘導には必要なく,胚珠組織内部から胚嚢までの花粉管誘導にのみ必要であると考えられる.花粉管が断続的に伸長する過程で,オオバヤシャブシでは柱頭で発芽した多数の花粉管のうち1本だけが子房に伸長し,2つの胚珠のうち発生が早い方へ伸長して受精が起こっていた.このように受粉後に子房の組織が発達し,花粉管が胚嚢まで断続的に伸長していく過程で,雌雄の配偶体の選択が行われていることが明らかとなった.

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© 日本植物形態学会
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