PLANT MORPHOLOGY
Online ISSN : 1884-4154
Print ISSN : 0918-9726
ISSN-L : 0918-9726
単細胞藻類の同調細胞集団におけるミトコンドリア,葉緑体,ピレノイドの動態
長舩 哲齊
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 18 巻 1 号 p. 35-45

詳細
抄録

要旨:細胞の中では,オルガネラはダイナミックな形態的変化を示す.異なるDNAをもつ細胞核,葉緑体,ミトコンドリアは相互に連携し,融合,分裂,分岐を繰り返しながら細胞周期(cell cycle)の一定の時期に,特定の形態に変化するよう制御されている.われわれの研究室では,同調培養した単細胞藻クラミドモナスおよびユーグレナ細胞を用いて,ミトコンドリアの形態を電子顕微鏡で追跡し,一時的に“巨大ミトコンドリア”が形成される現象を見いだした.そして,ミトコンドリアのダイナミックな動態をcell cycle中に最初に位置づけ,“ミトコンドリア・サイクル”を確立した.また,このような現象は葉緑体でも起こるのではないかと推測し,複数個の葉緑体をもつユーグレナの同調培養集団における葉緑体形態を経時的に追跡した.その結果,葉緑体についても“巨大葉緑体”をみいだし,ダイナミックな“葉緑体・サイクル”の存在を明らかにした.従来から,ピレノイドは光合成酵素リブロース-1 ,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RuBisCO)の貯蔵場所と考えられてきたが,その機能については判っていない.ピレノイドの機能を知るための一歩として免疫電顕法を利用し,ユーグレナのcell cycleにおけるピレノイド構造の変化と光合成酵素RuBisCO分子の動態を経時的に追跡し,ピレノイドが光合成における炭酸固定と密接な関連のあることを明らかにした.

著者関連情報
© 日本植物形態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top