PLANT MORPHOLOGY
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被子植物の受精を決定づける最終因子
森稔 幸
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2006 年 18 巻 1 号 p. 55-60

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抄録

要旨:被子植物の受精過程は動物のそれに比べるときわめて複雑であり,配偶子形成から受精の瞬間までが密集した配偶体組織(花粉・胚のう)の中で段階的にとりおこなわれる.この事情から,植物体内での配偶子間相互作用の瞬間やそれに働く因子の知見はこれまで皆無であった.近年,私はテッポウユリの単離雄原細胞(花粉内の雄性生殖細胞)をもとに雄性配偶子で特異的に発現する新規膜タンパク質GCS1(GENERATIVE CELL SPECIFIC1)を発見した.シロイヌナズナのGCS1変異株を用いた機能解析結果から,GCS1は受精の最終段階である配偶子間の接着・融合に働く重要な分子であることが示唆された.また,GCS1は被子植物のみならず粘菌や藻類,原虫類でも保存されており真核生物の接合にひろく関与している可能性がある.この発見はこれまで分子レベルでの知見が全くなかった被子植物受精を理解する上で重要な手がかりであり,有性生殖の基本メカニズムの解明に大いに貢献すると考えられる.

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© 日本植物形態学会
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