公共政策
Online ISSN : 2758-2345
シンポジウムA「環境政策の総合化をめぐって」
環境保全とエネルギー政策
田中 紀夫
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1998 年 1998 巻 p. 1998-1-016-

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抄録

①4大エネルギー消費が現代文明に浸透しているため,エネルギー政策は,輸入エネルギーの遮断などの緊急事態をも想定しておかねばならない。②エネルギーに関わる環境負荷は,生産・輸送から消費・廃棄の段階に広がり,環境保全対策も広域化,国際化している。③環境負荷の発生から,原因究明,対策発効,効果浸透までには多大な時間がかかっており,環境破壊に歯止めがかかっていない。④この原因は,戦後復興を急いだ企業優遇システムとしての「日本型企業社会」の存在がある。その構成要素は,a.倫理感を希薄にしてモノ・カネづくりのための企業利益極大を目的,b.企業に終身雇用され忠誠を誓った社員・家族・関連する企業城下町,c.戦前からの官僚システムの上に企業利益優先策を推進した国会議員・中央官僚・地方議員・自治体官僚組織,d.イデオロギー的に育てなかったNGO,などである。⑤現代エネルギー文明の先行きを展望すると,a.自動車交通とb.原子力発電を位置付けなければならない。a.自動車偏重社会は,死傷事故の多さ,環境負荷の広域化,人の尊厳意識の低下から是正すべきで,自動車の高価格化と公共交通機関の増強が必要である。b.原子力発電については,高レベル廃棄物対策を強力に進めるが解決策がなく,炉の安全性にも問題が残るようなら,国民に対して代替エネルギーの実態を提示したうえで,廃棄を伝え,自動車縮小と共に現代文明を簡素化する。

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© 1998 日本公共政策学会
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