公共政策
Online ISSN : 2758-2345
投稿論文
改革推進の政策科学
秋吉 貴雄
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 1999 巻 p. 1998-1-016-

詳細
抄録

わが国では近年経済構造改革等の改革の重要性が認識されているものの、改革推進の具体的方策に関する議論は欠落している。政官業の鉄のトライアングルが改革推進の阻害要因として指摘されるが、改革が進まないのはそれを封じ込める勢力が形成されないという日本型政策決定システム及び制度間関係に要因があると考えられる。

本研究では、改革推進の規定要因を考察し、具体的方策を検討するため、わが国の政策決定の制度特性について米国との比較制度分析を行っている。そこでは日米の航空輸送産業における規制緩和を「決定的事例」として取り上げ、第一に修正サバティアモデルによって双方の政策決定過程の特質を抽出し、第二にそれをもとにイシューコンテクストと制度的コンテクストという2つのコンテクストから比較し、制度特性を考察している。

この二段階の分析結果から、二重の政策決定構造というわが国の制度特性が指摘され、改革推進要素として、1)改革推進グループの構成、2)イシュー選択時の2つの外的事象の影響及び改革理念を創出・普及する「政策事業家」の存在、3)包括的議題設定、4)改革推進グループのコアアクターの制度的位置付け及び関連性、という4つが指摘される。

そしてわが国で抜本的改革を行うためには、長期的には官民の融合関係による政策決定空間の変革が重要である。また短期的には官僚の仕切り下に政策事業家となる政府首脳部や有力議員等をいかに介在させるかが重要になる。

著者関連情報
© 1999 日本公共政策学会
前の記事 次の記事
feedback
Top