政治過程はある一定のルールに基づいて行われるゲームにすぎない。ゲームの帰結たる人々の厚生を高めるには,ゲームのルールそのものの適切さが問われるべきである。代議制民主主義を前提にすれば,政治過程というゲームを規定するルールの中で一番重要なのは選挙制度であろう。選挙制度は明確に定められる法制度であり,望ましい経済政策をもたらすルールとして適切に定められる必要がある。本論では,選挙制度に結びついた,政治が引き起こす経済への歪みについて若干の考察を加え,望ましい選挙制度を探っていきたい。
選挙区から選出される政治家によって支えられる政府は,選挙区制度に結びついた行動を規定される。日本における議員定数の配分は,相も変わらず不平等である。新選挙制度によって若干は緩和されたとはいえ,むしろ,各県に1議席ずつ配ったあとで,最大剰余方式により,残りを配分するという姑息な方法によるmalapportionmentで,その不平等を固定してしまった感があり,その問題点は広く認識されなければならない。このような不平等は,軽んじられた都市部住民はともかく,少なくとも重んじられているはずの地方住民にとって望ましいものといえるのであろうか?本論は非常に一般的な経済モデルに,多様な政治過程を許容する確率的投票モデルを導入することによって,その疑問に答えようとするものである。