2000 年 2000 巻 p. 2000-1-017-
本稿は,長峯(1998)で提示した公共投資の地域間配分に関する政治-経済モデルを踏襲し,前回の県レベルの道路投資を対象にした実証分析をさらに発展させ,新たな分析視点を織り込むことを意図する。ここでいう政治-経済モデルとは,資源配分,地域間再分配,景気(雇用)対策という公共投資に期待される複数の政策目的と政治プロセスからの影響力を同時に考慮しようとする実証モデルである。今回考慮した分析視点は,第1に,国が投資主体となる道路投資(直轄事業)と県が投資主体となる道路投資とを区別し,両者の配分構造の違いを分析すること,第2に,利益集団たる建設業の多寡が道路投資の大きさと相関をもっている可能性を考慮すること,第3に,中央官僚の地方自治体への天下り出向が,その地域への道路事業や補助金配分への橋渡しになっている可能性を考慮することである。実証結果は,国の道路投資と県の道路投資の決定要因が微妙に異なり,前者については,国(建設省)が各県の道路投資に対するニーズ(面積)を睨みながら,都市地域から地方へと再分配している様子が示唆され,後者については,道路投資額と国庫補助額の同時決定の枠組みが支持され,各県への国庫補助額(1人当たり)が道路需要の充足と地域間再分配という両側面に答えていることが示された。政治家,官僚,建設業者の影響については,一部で有意かつ興味深い結果が示されたものの,全体的には今後の分析課題となった。