公共政策
Online ISSN : 2758-2345
自由論題報告
電力小売自由化
兼平 裕子
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2000 年 2000 巻 p. 2000-1-020-

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抄録

世界的な規制緩和の流れの中で,自然独占の典型例であった電気事業も1995年に卸発電事業が自由化され,今,小売自由化が議論されている。「地域独占」と「総括原価方式」による料金決定と引き換えに広範な規制を受けてきた電気事業の再編が目指されている。

電力の小売自由化にあたっては,市場原理の導入-すなわち効率化という要請と,ユニバーサル・サービス,供給信頼度,エネルギー・セキュリティ,環境問題への対応という公益性との両立が考慮されねばならない。具体的には新エネルギー発電や原子力発電と両立できる自由化でなければならない。

電力の規制緩和によって望まれるのは「経営自主性を最大限に確保」し,「行政の介入を最小化すること」である。電力会社が規制依存型から脱却し市場の評価を得ることで,『普通の会社』になり,消費者の利益を確保することが求められている。これらの点を考慮すると,一般電気事業者である電力会社が主たる供給責任を負いながら,新規参入者と対等な立場で競争できるような全面自由化(Grid Access Model)が望ましい。

電気事業者に求められるのは,安定・安価・公平という3つの公益性であるが,わが国の特殊性を考慮すると,エネルギー政策を含めた公益的課題については政府が国の政策として国民に明確に示した上で,民間企業である電力会社は市場性を追求すべきである。そして,これらの条件のもと,電力会社と新規参入者との有効で対等な競争が行われ,消費者自身が使用する電力供給者を選択できる仕組みが作られるべきと思料する。

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© 2000 日本公共政策学会
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