行政による不祥事の相次ぐ発生を契機として,行政統制制度の拡充の必要性について広く認識が進んでいる。これに伴い,近年,新たな行政統制制度が実際に国会に導入されている。ところが,行政統制の枠組みをめぐる議論は整理されていない状態にあり,新たに導入された制度についても必ずしも所期の効果を発揮しているとはいい難い。その理由の一つは制度を捉える適切な理解が不足しているためであると考えられる。
一般に,ある制度を設計し,導入する場合,何らかの機関や法制度などを単純に現行制度にビルトインすれば事足りるのではない。導入しようとする制度案が,導入の目的,対象,関係アクターの志向などの理解と結びつくものでなければならない。
本稿は,こうした制度設計の考え方に従い,議会による行政統制制度を設計するにあたりどのような理解が必要か,その視座を提供することによって実際に制度設計を試みるものである。
検討の結果,議会による行政統制制度がよりよく機能するために,以下の制度案を導入するのが望ましいと考える。すなわち,(1)委員会運営に一定の少数者調査権の仕組みを導入する,(2)既存の委員会においていわゆる一般調査を活性化する,(3)質問制度,とりわけ質問主意書制度を拡充する。