抄録
我が国では、建設土木業界を始めとした様々な業界の中小企業を疲弊させる源泉として、大企業による下請中小企業の生産価値の収奪の問題(収奪問題)が長年指摘されておりその解決が問われてきた。本研究は、収奪問題の緩和に資する知見確保を企図し、収奪の現場当事者である大企業の購買担当者の収奪促進的購買態度を測定し、その背景に存在するパーソナリティーや道徳性との関係性を分析した。その結果、権威主義的組織や購買担当者の反社会的パーソナリティーがサプライヤーに対する配慮を低下させることが明らかとなった。また権威主義的組織や購買担当者の反社会的パーソナリティーが弱い場合、サプライヤーに対する配慮は高まる一方で、自社のマニュアル遵守やコスト改善意識が高まる構造が存在する可能性も併せて示された。