実践政策学
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熊本県の「緑の流域治水」における雨庭整備の実態解明と今後の雨庭整備論
導入目的と主体間連携に着目して
前田 菜緒太田 尚孝新保 奈穂美
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2024 年 10 巻 1 号 p. 41-52

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抄録
東日本大震災や近年の大規模水害を受け、グレーインフラや点的発想による防災の限界が明らかになった。この状況を受け、流域治水をはじめとして国レベルでグリーンインフラの整備が推進されている。しかしながら、現時点での整備数は多くなく、その要因として多種多様なグリーンインフラを誰がどのように整備するかが不明確であることが考えられる。そこで本研究では、グリーンインフラの一つであり、整備が比較的容易と思われる雨庭に注目し、今後の拡大を見据えた整備のあり方を明確にすることを目的とし、流域単位で雨庭整備に取り組んでいる熊本県を調査対象とした。その結果、令和2年7月豪雨を契機とする「緑の流域治水」の考え方と雨庭が合致しており、産学官連携で整備が進められていることが明らかになった。加えて、雨庭には可変性があり、形態は治水以外の導入目的により決定されること、事例によって主体の参画段階などに差があることが明らかになった。導入から維持管理までに着目すると、まず導入目的を明確化しその解決策としての雨庭を上位計画に位置付けることや、キーパーソンによる主導、企業と関係を密にする主体の参画が求められる。次に、整備段階では補助金制度の創設や住民参加による低コスト化が、維持管理段階では既存システムの活用が求められる。これらはどの自治体でも実現できるような汎用性の高い取り組みであることから、本研究の分析により、雨庭整備に有効な手法の一端を把握できたと考えられる。
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