抄録
本研究は、長野県下伊那郡大鹿村おいて介護予防につながる活動をしようと同地在住の有志者らが立ち上げた任意団体「ぬくもりの会」の活動を取り上げて公共経営の1つのあり方を探るものである。現地での調査については、「ぬくもりの会」を構成する有志者、大鹿村役場担当職員、大鹿村社会福祉協議会担当職員の3者を対象として、2022年9月28日、2023年7月20日、21日の2回(3日間)において実施した。調査では、参与観察、インタビュー、フォーカスグループ、ディスカッションなど直接の観察と参加を中心に組み立て、個人の経験やストーリーに焦点を当て、それを構造化することを目指した。また、分析に当たっては、ディスコース分析を採用した。調査を通して特徴的に見えたのは、「ぬくもりの会」が互いに顔を知り合うことで住民同士、住民と行政及び社会福祉協議会などの機関が行き来しやすい環境を整える活動であった。この活動によって、住民が声を上げやすく、またそれを聞き届けやすいようなネットワークが築かれていた。「ぬくもりの会」の活動は、このような応答可能性の域の拡大によって地域の円滑油として機能し、それもまた「地域の力」として公共経営の1つとなり得ることが示された。