抄録
これまでの研究では、投票は市民が刑事政策に参加するルートの中でも特に経験頻度の高いものであること、および候補者の態度は有権者の投票行動と関係することが示されていた。他方、刑事政策に関する公約の内容によって回答者の投票意図が変わるのかについては検討されていなかった。そこで、本研究は、厳罰的な公約を有する選挙候補者は、治療的な公約を有する候補者や犯罪に関する公約を有さない候補者と比べて、投票される確率が上がるのかを検討することを目的とした。具体的には、厳罰的な公約を有する候補者、治療的な公約を有する候補者、犯罪に関する公約を有さない候補者のポスターを提示し、それぞれの回答者の投票意図を尋ねた。497名分のデータを用いて分析を実施したところ、条件間で投票意図に相違があるとは言えないことが示された。その理由として、市民にとって犯罪対策は他の争点に比べて重要ではないとみなされていることを挙げたうえで、知見から得られる示唆について論じた。