抄録
近年、地方創生や地域課題解決の文脈において、18世紀にイギリスで生まれた「シビックプライド」の考え方が、公共空間デザインやまちづくりの現場においても注目されている。筆者らは、国内外の多様な社会科教育の実践を参照しつつ、従来の「公民的資質」との異同を探りながら、新しいカタチの小学校地域学習を実践するために、シビックプライドを「市民が地域社会に対してもつ自負と愛着、またその向上に対して積極的に参加する姿勢」と定義し、その教育意義、手法開発について研究している。本研究では、小学校の地域学習において「まち歩き」を基盤とした地域学習プログラムが、シビックプライド涵養に関して果たした役割について、アクションリサーチとして参与観察し、そのメカニズムを考察した。具体的には、熊本市立日吉東小学校4年生の社会科教育及び総合学習の時間を対象に、「まち探検」、「まち歩きマップづくり」、「交流会」という一連のプログラムについて、教材の作成や運営方法について実践及び検証を行った。研究の結果、ワークショップ的な授業を実施することで、地域らしさ(地域アイデンティティ)を自分事化し、物語として紡いで(協働して)いくプロセスを可視化することができ、児童が「地域社会」との結びつきを、クラスメイトとともにグループ学習を行って理解していく過程が、シビックプライドの涵養に効果的であることが考察できた。