抄録
人口停滞・減少、高齢化などの社会状況の変化の中で、社会基盤整備は量的拡充から質的向上へのシフトが求められ、かつ、他の施策との複合化や地域住民との協働を求めるなど住民に伝える内容は高度化しつつある。一方、価値観の多様化やコミュニティ帰属意識の低下により地域住民の総意はまとまりにくくなってきている。本稿ではこのような状況下における合意形成を進める一助として、この過程を4つの形態のコミュニケーションからなるモデルとして解釈することを提案し、これがチェンバースの唱える熟議を成立させる2要素を充たしていることを示す。その後、地域交通政策における合意形成過程のモノグラフである「コミュニティ交通のつくりかた」に示されている事例を対象に、合意形成に至るまでのコミュニケーション過程の読解を試みる。