抄録
スペインの哲学者オルテガは、「自分に対してなんらの特別な要求を持たない」者のことを「大衆」と呼び、近代社会においてその出現が顕著となり様々な社会的弊害をもたらしていることを批判的に論じている。実際、我が国においても世論の空気に流されやすい「大衆」による人気政治が問題となっていることが指摘されている。そこで、本研究では、国民の直接的な政治関与の手段である投票行動に焦点をあて、オルテガの論ずる大衆性と投票判断基準の関連性を調査分析した。その結果、自己閉塞性の高い個人は選挙そのものに無関心である一方、傲慢性の高い個人は、自分自身で物事を深く考えず、候補者の知名度や、周りの人の意見、メディアでの評価といった周辺情報を重視し、とりわけ、候補者の「おもろさ」という、いわゆる真面目とは言い難い基準をより大きく重視する傾向が示唆された。