抄録
近年、全国新幹線鉄道整備法に基づく整備計画線の全線開業が現実になろうとしてきているが、今後の基本計画線の新規着工には費用対効果の観点から厳しい目が向けられる可能性がある。費用を抑えた新幹線整備の方法としては、ミニ新幹線やスーパー特急方式といった暫定整備計画が提案されているが、ミニ新幹線は路線自体が在来線そのものであるため高速運転できず、また、運転中止や遅れ等が生じやすく、信頼性の低いシステムになっている。スーパー特急方式についても、通常の新幹線とは乗換を要し、建設費がフル規格とあまり変わらないにもかかわらず、青函トンネルのように実態としては低速運転せざるを得ないなど利便性が低い。また、新線部分以外は在来線そのものであるため、やはり運行の信頼性が低いシステムである。そこで、本研究ではコストを抑えながらも高速運転でき、既設新幹線とも直通できる方式として単線の新幹線システムを取り上げ、技術的側面や運行計画を考慮してシステム構成を検討し、ケーススタディを通じて基本的性能を確認した。その結果、全線複線である場合に比べて軌道の総延長を約40 %低減させながらも、片道2本/時の運転本数と約150 km/hの表定速度を確保しうる新幹線システムの可能性を示すことができた。