抄録
近代河川整備の弊害として人々の河川や水循環への関心と関係が薄らぐ「川離れ」がある。特に都市内を流れる河川においては人口の過密化や土地利用の高度化などに伴う河川の排水路化または暗渠化が進み、「川離れ」は河川再生の実践者と河川や水循環への関心が薄い市民との間の意識の乖離として横たわっている。本研究では、東京都を流れる善福寺川を対象に、筆者らが小学校において実践してきた河川教育の中で観察された「気づき」の効果を「川離れ」解決のための一手法として取り上げ、「気づき」が形成されるまでのプロセスとその条件を整理・分析した。その結果、「気づき」が形成されるまでのプロセスは7つの段階によって構成され、その形成には「非常に近い他者」、「河川へのアクセス性」、そして「よそ者」という3つの条件が存在したことを明らかにした。